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人は一日を朝からむかえ夜に終えます、しかし少女の一日は夜から始まります。
人々が寝しずまったころ少女は眠りから目を覚まし、誰もいない村の広場へとやって来た。
静寂につつまれた村、少女は広場の中心にたちつくしたまま。
しばらくすると、少女は歌いだしました。
しばらくすると、少女は踊りだしました。もしその場に人がいたならば、いっしょに楽しんでいるのではと、想うくらい少女は楽しそうに歌い踊っていました。
すると、今度は寝しずまった村から子供たちがパジャマ、裸足で外へ出てきました
「いらっしゃい。私のお友達!」
少女は子供たちに言いました。しかし、こたえる子供たちは誰もいません。あたりまえです、よく見ると子供たちは、皆目をとじて眠っているのだから。
「今日も私の話を聞いてくれるかな?」
こたえてくれる子供たちは誰もいません。それでも少女は子供たちにかたるのをやめません。
「今日はね、私の古い友人の話。今度、皆にも紹介するね!」
少女は歌い、踊り、そして語ります。やはり、こたえてくれる子供たちは誰もいません。でも、眠っているはずの子供たち、どこか寝顔は楽しそう。
しばらくすると、少女は語りを止めました。
「あっ!もうこんな時間。私も皆も帰らなくちゃ」
少女は再び歌いだします、始の歌とは違う歌を。すると、子供たちが一人、また一人と自分たちの家へと帰っていきました。少女はそれを最後までみおくると
「ばいばい。私のお友達。また明日もたくさん遊ぼうね、私のいろんなお話、聞いてね!」
少女はとてもうれしそうに、とてもまんぞくそうに、自分の家へと帰っていきました。そして、朝がくる前に眠りにつきます。
「おやすみなさい!」
この場にはいない子供たちへの、おやすみのあいさつ。それが、少女の眠るまえの毎日の決まりごと
朝。
目を覚ました一人の少年が、母に言いました。
「母さん、昨日ね夢を見たよ」
「?どんな夢だったの」
どこにでもある母と子の会話。
「うん。村の友達と一緒にね、知らないところにいるの。でも怖くはなかったよ。しばらくするとね、女の子が僕たちの所にやって来たんだ。知らない子のはずなのに僕たち女の子と一緒に遊んでるんだ。女の子は僕たちに色々話しを聞かせてくれたよ。でも、夢だからかな?女の子が聞かせてくれた話、はっきりと思い出せないんだ、すごく楽しかったのは覚えてるのに・・・」
少年は悲しいのか、顔を母からそむけてしまいました。
「よほど楽しかったのね。なら、眠るときはその女の子を想ってみたらどう。また、夢で女の子に会えるかもしれないよ」
母の言葉に少年は、顔をあげ母に聞きました。
「想えば女の子に会えるかな?」
「分からない事があれば何でもためしてみる!」
母は少年に笑顔で答えました。
「うん!」
少年も母につられて笑います。
「あっ!もうこんな時間だ。友達との約束に遅れちゃう!母さん話を聞いてくれてありがとう。じゃあ、行ってきます」
少年は元気よく外へ走っていきました。母は少年を見送ります。
「行ってらっしゃい。」
しばらくすると、母はある事を思い出しました。
「あの子の話、まるでこの村に昔からあった、語りの少女の話に似ているね。ただの昔話だと思ってたけど、不思議なこともあるんだね」
母はそんな事を思いながら家の仕事を始めました。
また、夜がやってきます。
少女の話の時間がやってきます。